Vol.85 好きも嫌いも建仁寺 05.2.27訪問/4.14掲載
 華やかな祇園にあって、ひっそりとしている建仁寺。広い境内の中心にある立派な三門や二重屋根の法堂(はっとう)、苔の庭には、京都五山の気高さが感じられます。京都五山とは、足利義満がつけた臨済宗の格付けで、を上位として、天龍寺相国寺・建仁寺・東福寺・万寿寺の順です。

 建仁寺を建てたのは、臨済宗の開祖、栄西禅師。でも、私は、この人が好きではありません。鎌倉で庇護された後、幕府や朝廷に取り入って勢力を広げていくやり方が、無の境地に達する禅の精神と矛盾すると思うからです。一方で、もう一つの禅宗の曹洞宗を広めた道元禅師は、都から離れた福井に永平寺を構え、ひたすら座ることを説きました。対照的な二人を見ると、現代にも通じる姿で、いつの時代も同じだな、と思ってしまいます。
 方丈に入り、まず目に入ったのは黄金の屏風です。江戸時代の画家・俵屋宗達の傑作「風神雷神図」。たなびく雲に乗り、無邪気に笑う風神雷神は、躍動感に満ちています。緑と白の対照的な色使いにひきつけられました。なお、これはレプリカ。本物は京都国立博物館にあります。

 奥に進むと、枯山水庭園に出ました。白砂の空間が多く、開放的な庭です。ここに差し込む光を浴びて、一人の外国人が座禅を組み、瞑想にふけっていました。
 さらに、法堂へ。天井には、02年に完成した「双龍図」が描かれています。2匹の龍は初めて見ました。双龍は、阿吽の呼吸で調和し、掛け合いをしているようにも見え、ちょっとほのぼの。

 栄西禅師が中国から持ち帰ったもう一つのものは、お茶の種。ここから喫茶が広がりました。建仁寺のすぐ北の祇園の花見小路には、お茶屋さんが並んでいます。古都歩きをした後の一服は、格別です。あまり好きではない栄西禅師ですが、こっちのほうの偉業には感謝しました。
写真(上から)「風神雷神図」とみとー/方丈の庫裏/法堂天井の「双龍図」