Vol.87 春日大社 思い出歩き
05.3.25訪問/4.15掲載
 花曇の金曜日。季節の行事以外では初めて、ぶらり春日大社を訪ねました。
 参道の「一の鳥居」をくぐってすぐ右手にあるのは「影向
(ようごう)の松」。切り株しか残っていませんが、能舞台で描かれている松です。12月の春日若宮おん祭では、見物客が沿道を埋め尽くす中、この前を総勢千人の大行列が通ります。去年は私も、江戸の侍に扮して行列に参加しました。少しでも侍らしくと、わざと大股で歩いたなぁ。そんな思い出を胸に、人気のない参道を往きました。

 左右に石灯籠が目立ちはじめました。一部が欠けて苔に覆われた古いものから、寄贈した企業名がくっきり分かる真新しいものまで、様々です。境内には、本殿の釣灯籠も合わせて3000基の灯籠があり、毎年お盆と節分に一斉にともされます。特に、節分の日は、寒さの中の薄明かりがとても暖かく、また神聖に感じられました。
 藤の花が見事に咲く神苑を通り過ぎ、宝物殿へ向かいました。源義経が使ったという国宝・赤糸威大鎧
(あかいとおどしおおよろい)のほか、鹿が描かれた文献や屏風もありました。奈良で鹿が大事にされてきたのは、鹿島神宮(茨城県)から神様が白い鹿に乗ってきた伝説からなのだそうです。宝物館を出ると、鹿が2頭いました。まるで私を待ってくれていたかのよう。見慣れた鹿が、きょうはちょっと特別に見えました。

 
いよいよ本殿です。空はどんよりしていても、建物の朱色は鮮やかです。有名な釣灯籠が年に2回の晴れ舞台をじっと待っていました。そういえば、家紋や文字、鹿の模様の灯籠もあって、見ているだけも楽しかったなぁ。ちょうど雨が落ち始め、帰宅の途に着きました。
写真(上から)春日大社の「影向の松」/万燈会の釣灯籠とみとー/本殿