Vol.2 佐保路に咲いた天平の華
 03.10.27訪問/11.3掲載
みとーと不退寺 平城宮跡から東へ東大寺まで続く佐保路。「秘仏と寺宝展」で毎年春と秋に公開される天平美術の三観音を見に、片道2.5kmを自転車で巡ってきました。

 通りから少し奥へ入り、白壁沿いに行くと、法華寺が見えてきました。聖武天皇が建てた総国分寺の東大寺に対し、法華寺は光明皇后が建てた総国分尼寺です。法華寺見所は、皇后をモデルに彫ったといわれる十一面観世音菩薩像(国宝)です。腰を左に少しくねらせ、右足を少しあげて、今にも歩き出しそうです。高貴な光明皇后を想像させます。秘仏だけに木の色がよく残り、背中から伸びる花びらのような光背も手伝って、黄金に輝いているようでした。
海龍王寺の五重小塔 海龍王寺は、法華寺のすぐそばにあります。本堂を中心に、五重小塔(国宝)がある西金堂と経蔵の2棟が残る小さなお寺です。ここにも十一面観世音菩薩像(重文)が安置されているのですが、胸や腰のあたりにかけている装飾品はとても緻密で一見の価値ありでした。

 最後に、在原業平が建立した不退寺を訪ねました。本堂は人が来た時だけ開けてくれます。中に入ると、神聖な冷気の中に線香の香りが漂い、1.9mの聖観世音菩薩像(重文)が私を迎えてくれました。先の像とは違って、大きくふくよかで人間的な印象を持ちました。また、全身の大部分に胡粉地が残っていて、その上に所々、黄色や赤の極彩色が見られ、カラフルな仏像だったことが想像できます。
 有名な大きなお寺でなくても、趣があり、それぞれに信仰の歴史や文化があることを知りました。小さなお寺でしか味わえない静けさや、その中でこそ引き立つ観音像の美しさを十分に味わいました。
写真(上から)みとーと不退寺/法華寺の本堂/海竜王寺の国宝・五重小塔