Vol.1 1300年の時を刻む平城宮跡
 03.10.29掲載
 奈良市の真ん中に位置する、だだっ広い空間。それが、710年に築かれた平城京の中心、平城宮跡です。南北約1km、東西約1.3kmの大きさからは、当時の繁栄ぶりがうかがえます。

 10月の秋空の下、私は、古都の風を受けながら、お気に入りの真っ赤な自転車で、ここを駆け抜けました。南の門である朱雀門や、宴会が行われた東院庭園が再現され、当時の華やかさを垣間見せてくれます。朱雀門の向こうには、大きな建設現場が見えます。天皇が政をした大極殿が現在、復元中で、平城京遷都1300年の2010年に完成予定です。しかし、復元するのはココまで。遺跡のほとんどでは、ススキがなびき、草むらからは心地よい虫のコーラスが聞こえてきます。
 奈良時代は、天皇が住み、政治や儀式が執り行われていた最も華やかな場所でしたが、いまでは、ジョギングする人、犬の散歩をする人、ハイキングをする親子など、市民が憩う場となっています。1300年という時の流れによって、私たちの生活は大きく変わりましたが、こののどかな風景に、当時と同じ空間を共有しているということを実感します。

 先日、この平城宮跡に地下トンネルで道路を通すという計画が持ち上がり、議論になりました。平城宮跡の発掘は、まだ3割ほどしか進んでおらず、多くが土の中に眠っています。結局、迂回するということで話がまとまったようですが、保存と開発という現代の私たちが直面している問題を、早速目の当たりにしました。
 自転車をとめて、遠くの生駒山に沈む夕日を眺めながら、ふと、そんなことを考えました。
写真(上から)みとーと平城宮朱雀門/朱雀門正面/東院庭園