Vol.96 大原女たちのララバイ
05.5.24訪問/6.3掲載
 田植えが終わり、梅雨を迎える準備が整った頃、大原の里を訪れました。紅葉の大原はバス停に長蛇の列ができるほどでしたが、この時期はとても静かです。

 
大原女祭り(5月16〜31日)が開催中で、無料で大原女(おはらめ)衣装を貸し出しています。大原女は、柴や薪を頭にのせて、街へ売りに行った女性のこと。紺の着物に赤い帯を前で結び、農作業をしやすいように着物のすそは短く、肩はたすきをかけます。頭に手ぬぐいをかけ、わらじを履けば、もう大原女です。普通の着物より手足を動かしやすく、わらじはピッタリ地面に密着して、とても歩きやすいのが意外でした。三千院ではすれ違う人たちの視線を感じ、すっかり大原女の気分。杉木立の中で思わずポーズをとったりなんかして・・・。

 さて、大原は、声明(しょうみょう)が有名です。声明は、経文に節をつけて唱える仏教の儀式音楽で、奈良時代にインドから中国を経て伝わりました。勝林院と来迎院は、大原声明2派の道場でした。
 勝林院では、声明をテープで聴くことができました。がらんとした広いお堂に響く低い声。一人から大勢で唱えるものまでバリエーションも様々。確かにそれはお経というより音楽。イスラム教のモスクから流れてくるコーランの響きと似ているなぁ、と思いました。
 来迎院の境内の南北には2つの川が流れています。声明の呂(呂旋法)と律(律旋法)から呂川(りょせん)、律川(りつせん)と呼ばれ、「呂律(ろれつ)が回らない」の語源にもなっています。律川の上流には、声明修行で、声明と調和して聞こえなくなったといわれる「音無の滝」があります。
 午後5時過ぎ。植えられたばかりのしそ畑にも夕闇が訪れようとしていました。四季を通じて何度でも訪れたい大原。その懐の深さに、母のような大きさと安らぎを感じました。
写真(上から)大原女姿のみとー/勝林院/音無の滝