Vol.72 耳を澄ませば…大原 04.11.24訪問/12.4掲載
 紅葉シーズン真っ盛り。しっとりモミジを鑑賞したい!と誰もが思うのですが、そうはいかないのが京都です。京都駅から大原行きのバスは超満員。道路は大渋滞。到着まで1時間15分。この間ずっと立ちっぱなしでした。
 しかし、秋色の山々と田畑の里の景色が現れ、気分は一気にほぐれました。空のいわし雲が、私をぐんぐん山の方へ引っ張っていきます。ここは大原なのです。


 三千院の名園・有清園を訪ねました。杉木立と苔の庭の向こうに立つお堂、庭に彩を添えるモミジ駅のポスターで何度も見た光景です。真っ赤ではありませんが、淡いピンクと黄色のモミジは控えめで、かえって庭全体のシンプルな美しさと調和していました。時折、杉林の間を縫って、日差しがスポットライトのように苔やモミジを照らします。この寺ならではの杉林のなせる美でした。
 三千院と並ぶ人気の寂光院。門に続く石段には、黄色いモミジの屋根ができていました。しかし、残念なことに、2000年に本堂が放火され、復元中でした。モミジが美しいだけに、その痛々しさがより印象的でした。こういう現実もあるのです。

 最後に、当初訪れる予定のなかった宝泉院を訪れました。柱を額縁に見立てた見事な庭園に、思わずうっとり。人も少なく、お茶とお菓子をいただきながら、心静かに座りました。生まれて初めて聴いた水琴窟の音色が、心に響きました。
 にぎやかだった三千院と寂光院。むしろ、宝泉院のほうが、声明で知られる静寂な大原のイメージに一番合っていました。
写真上から)寂光院の庭園のみとー/三千院の名園・有清園/宝泉院