Vol.94 上賀茂神社 神の気配
05.5.17訪問/5.24掲載
 真っ青な空を背景に、鮮やかな朱色の鳥居をくぐると、緑の芝生が広がります。二つ目の鳥居をくぐると、今度は白砂――。京都三大祭の葵祭で知られる上賀茂神社(賀茂別雷(かもわけいかづち)神社)を訪れました。

 細殿前には、おなじみの「立砂(たてすな)」が二つ、美しい円錐形で並んでいました。神社のご神体、神山(こうやま)を見立てたもので、神が宿ると言われています。なんか、天と交信しているような不思議なパワーがありそうです。さらに進むと、カーブを描きながら小川が静かに流れていました。昔は、参拝者はこれより先には行けませんでした。
 橋を渡って神域へ。自然に背筋が伸びます。賽銭箱の脇に、「特別拝観」と書かれた看板を見つけました。聞けば、4月1日から、これまで拝観できなかった本殿(国宝、撮影NG)が、宮司の説明付きで見られるようになったそうです。
 申し込むと、まず控え室の直会殿(なおらいでん)へ通されました。お祓いを受け、いよいよ本殿です。中には、木造の小さな社が2軒並んでいました。本殿と権殿(ごんでん)です。もともと神社では、21年に一度、お社を建て直す「遷宮」をしていました。しかし、費用が莫大で、1868年を最後に建て替えられていません。現在進められている桧皮葺の屋根の葺き替えですら、10億円かかるそうです。

 本殿入り口の左右には獅子と狛犬の絵、屋根の下には葵の紋。屋根は流れるように前に反りだしています。説明の一言も漏らすまいとメモを取りました。と、ふと辺りを見回すと、本殿の上を覆うように木々が生い茂っているのに気づきました。ザワザワと風に大きく揺れています。一瞬、何も聞こえなくなり、神の存在を感じたような気がしました。
 本殿の背後には神山。前には白砂。もうこれ以上は近寄れない、神々しい場所なのです。
写真(上から)上賀茂神社の一ノ鳥居/楼門とみとー/細殿前の「立て砂」