Vol.92 談山神社 ほのぼの蹴鞠
05.4.29訪問/5.17掲載
 「アリ!」「ヤア!」「オウ!」
 新緑に囲まれた十三重塔を背に、平安装束の鞠人(まりびと)たちが鞠を蹴り上げます。

 ここは、
桜井市多武峰(とうのみね)の談山(たんざん)神社。奈良市から車で南に1時間半の山の中にあります。けまり祭りは春と秋の年2回。山奥での蹴鞠には、実は訳があります。
 神社の裏山は、談山(かたらいさん)といって、645年に中臣鎌足と中大兄皇子が「大化改新」の談合をした場所です。そして、この二人が出会ったのが、飛鳥寺での蹴鞠の会でした。皇子が蹴って飛ばしてしまった沓(くつ)を、鎌足がひろって差し出したそうです。一方で、それを笑う蘇我入鹿。この場面を含め、「大化改新」の一部始終を描いた巻物が、展示されていました。
 飛鳥時代から続く蹴鞠。でも、今目の前の鞠人たちには、見覚えがあります。そう、京都の下鴨神社の「蹴鞠始め」の人たちです。京都の蹴鞠保存会の人たちが遠征していたのです。
 ただ、下鴨神社と違うのは、観客の数。混雑はなく、間近で見ることができました。鞠がすぐ目の前に飛んでくることもあって、迫力満点。時々、木の枝に鞠がひっかかる場面もあり、蹴る方も見る方もほのぼのしていました。女性の鞠人もいました。
 青空と新緑に囲まれて、気持ちよさそう。サッカー好きの私としては、ぜひやってみたくなりました。

 この談山神社の別院として、鎌足の長男が建てた聖林寺が、近くにありました。高台にあり、大和平野や三輪山を一望できます。見所は、十一面観音像(国宝、撮影NG)。肉付きがいい大柄の仏像で、癒し系というより、頼りがいのあるタイプ。座って下から見上げると、凛とした顔が一層神々しく見えました。
 この辺りは、紅葉で有名です。でも、生命力あふれる新緑の時期も、私は大好きです!
写真(上から)談山神社・十三重塔とみとー/談義神社の蹴鞠/聖林寺の屋根