Vol.88 東大寺 仏像オールスターズ
05.3.6,25訪問/4.19掲載
 3月というのに真冬のような寒さが続き、彩のない風景に観光客もまばらです。しかし、今こそ、心静かに仏の世界を堪能できるのです。
 東大寺は大仏だけではありません。数多くの仏像の傑作が安置されています。
 まずは、戒壇院へ。戒壇とは、正式な僧侶として認められるための儀式をする所。日本で初めて正しい戒律を授けた鑑真和上にちなんで建てられました。長い石段から中に入ると、持国天、増長天、広目天、多聞天の四天王像(国宝)がありました。端正な顔立ちとしまった体型。大陸風の甲冑に身を包み、この空間をしっかりと守っています。
 中でも惹かれたのは、広目天です。眉間にしわを寄せた思慮深い顔。手には、武器ではなく、筆と巻物を持っています。聡明さと洞察力の鋭さを感じ、しばらく目が離せなくなりました。

 続いて、三月堂(法華堂)へ。ここは天平仏の宝石箱とも呼ばれるお堂で、16体の国宝・重文の仏像が大迫力で並んでいます。一歩中に踏み込んだ途端、槍を持った持国天が鋭い視線で私をにらみつけ、ドキリとしました。戒壇院のモノより大きく、今にも飛びかかってきそうです。
 彼らが守る本尊は、不空羂索(ふくうけんじゃく)観音像
。注目すべきは、王冠です。ヒスイやトルコ石など無数の宝石で飾られ、「世界3大宝冠ですよ」と寺の人が自慢げに話していました。小さな日光・月光菩薩は、涼やかな顔で、静の部分を担当していました。この舞台には天平のオールキャストが勢ぞろいしています。その豪華さに、日が暮れるまで陶酔していました。
 
三月堂を出ると、向かいの開山堂で椿の花が咲いていました。奈良三大名椿の一つ、「のりこぼし」です。椿の次は、桜が咲き、観光客にぎわうシーズンの到来です。
(仏像は撮影禁止のため、残念ながら撮影・公開はできません)
写真(上から)戒壇院とみとー/三月堂/のりをこぼしたように一部が白い開山堂の椿