Vol.86 神仏の森 春日山原始林
05.3.20,21訪問/4.14掲載
 若草山は、春と秋の2回山開きをします。春はその記念に「鹿せんべいとばし大会」が開かれます。ギャグのようですが、今年で13回目の奈良が誇る恒例行事なのです。家族連れなど大勢の人が集まり、私も出場しました。鹿せんべいを遠くに飛ばした人が優勝なのですが、軽くて割れやすく、思うように飛びません。私は、場外へ飛んで「記録なし」、最後は「観客」の鹿ちゃんの口の中でした……。優勝は35mでした。
 若草山にも登りました。遠く見渡せる広大な奈良盆地は、建物がぎっしり詰まっています。平城宮跡の広場も小さく見えます。こうしてみると、奈良は都会だなぁ。

 若草山の奥には、世界遺産の春日山原始林があります。春日大社の神山で、千年以上、狩猟や伐採が禁止され、大切に守られてきました。この季節は、葉を落とした木々が多く、多くの光が差し込んできます。最大の見所は、鶯ノ滝。高さ10mほどの小さな滝ですが、佐保川の源流から流れ出す水は勢いよく滑り落ち、滝つぼからは冷気(霊気)が湧き出していました。
 近くに興福寺の別院へと続く石段を見つけました。鐘楼や本堂がありましたが、無人らしく荒れ果てています。そして、寺なのに鳥居がありました。さらに春日山石窟仏にも寄りました。東大寺の大仏殿を建てるために石を掘った跡に彫られた石仏でした。

 
春日山は、奈良の主な社寺と関係が深い神仏習合の山なのです。今ではドライブウェーが貫き、アクセスが容易になりました。でも、千年以上前からこの山に込められた信仰心は、受け継がなければなりません。それが世界遺産の意義だと思うから。
写真(上から)鹿せんべいとばし大会/春日山原始林とみとー/鶯ノ滝