Vol.71 柳生街道を往く 人情編
古道を歩くシリーズW                04.11.23訪問/12.3掲載
 剣豪の里として知られる柳生は、奈良市の東部にあります。市内でも、街から離れた山里です。奈良から柳生に続く柳生街道(全長19km)。今回はその半分を歩きました。柳生十兵衛ら剣の達人が通った道。いざ、覚悟!

 
出発地点は、新薬師寺から少し登ったところ。道は、閑静な住宅地から一変、薄暗い森の中へ続きます。「滝坂の道」と呼ばれ、能登川沿いを遡ります。川の流れが心地よい音を立て、辺りはひんやり。所々道がぬかるんでいました。あまり日差しが入らないからでしょう。江戸時代に整備された石畳もあります。硬い石の道は、それほど歩きやすくはありませんが、昔から街道として栄えた証です。今でもトレッキングコースとして、道は健在です。
 
滝坂の道の楽しみは、石仏めぐり。寝仏、夕日観音、朝日観音などを探しながら歩くと、険しい上り坂も退屈しません。友達がいたらもっと楽しいだろうなあ、と思っていたら……写真を撮ってもらおうと声をかけた73歳のおじいちゃんと仲良くなり、自然と一緒に歩いていました。ここは、おじいちゃんの散歩コースなのだそうです。街道のこと、奈良のこと、いろいろ教わりながら歩きました。峠の茶屋では、名物のよもぎ餅をご馳走になり、お土産までくれました。街道の良さは、人の温かさに触れることができる人情にもあるのですね。

 茶屋からは、比較的なだらかな下り坂が続きます。バリバリッと、落ち葉の道を踏みしめながら。
 歩き始めて約3時間。円成寺
(えんじょうじ)に着きました。街道の中間地点で、今日のゴール。太陽は、今日最後の輝きで、門前の庭園にある真っ赤な紅葉を照らしていました。
写真上から)峠の茶屋のみとーとおじいちゃん/柳生街道の朝日観音/円成寺