Vol.42 葛城古道のボヘミアン
古道を歩くシリーズT                04.5.12,14訪問/5.18掲載
 「一目百万本」といわれる葛城山のツツジ。満開の知らせを聞き、出かけました。が、正午に着いた最寄りの御所(ごせ)駅で見たのは「山頂行きのロープウエー2時間半待ち」の看板。予定を変更し、山麓の古道を歩くことにしました。葛城は、4、5世紀に豪族の葛城氏や鴨氏の本拠地になり、ゆかりの寺社や旧跡が数多く残っているのです。

 出発は、高鴨神社。上賀茂・下鴨神社をはじめ全国の鴨社の本社です。といっても本殿は小粒です。参道の杉の大木が太陽を遮り、涼しさに包まれた境内でした。
 次に目指すは、神々の住む「高天原
(たかまがはら)」。しかし、すれ違う人もなく、別の山に登ってしまい、とうとう行き止まり。薄暗い山の中で心細くなり、もうやめようか悩みました。地元の人に道を尋ね、杉林を抜け、やっと棚田の集落に出ました。ここが高天原です。水田で鳴く蛙の声にほっと一息。眼下には御所市街、反対側には折り重なった山々。ちょうど下界と天界の間にいるようでした。
 再び、誰もいない杉林を下り、天香具山・畝傍山・耳成山の大和三山を眺めながら、あぜ道を通って九品寺
(くほんじ)へ。本堂の裏には、千体石仏があります。合唱団のように整列していて、お地蔵さんたちの歌声が聞こえてきそうでした。

 足にマメができましたが、地元の人に「気ぃつけや〜」と励まされ、13kmを歩き通しました。彷徨い人(ボヘミアン)のようになった5時間。真上にあった太陽も、山の向こうに沈んでいました。神々と出会い、山里ののどかさを感じる道でした。

 追伸 2日後、ロープーウエーで葛城高原に行きました。しかし、大雨の後で、ツツジはほとんど散ってしまっていました。「一目百万本」は来年に持越しです。
写真(左)大和三山を見ながら葛城古道を歩くみとー
(右:上から)高鴨神社/杉林の葛城古道/九品寺の千体石仏