Vol.41 酬恩庵、雨上がりの一休み
04.5.9訪問/5.12掲載
 朝からしとしと降り続いていた雨がやみ、どんよりと重そうな雲が空を覆っています。
 こんな日は、静かな場所で一休み。懐かしいアニメ「一休さん」でおなじみ、京田辺市にある酬恩庵(一休寺)を訪ねました。
 一休禅師は63歳のとき、恩師に報いるため、荒廃していた寺を復興し、晩年を過ごしました。「酬恩庵」の名はこれに由来します。

 一歩、門から足踏み入れると、新緑のモミジがズラリ並んでお出迎え。雨に洗われた葉っぱがしっとり揺れ、辺りは、プーンと湧き上がってくる土のにおいがします。
 このお寺の見所は、方丈庭園です。南庭は、白砂とこんもり茂るサツキの刈り込みが周囲の緑に包まれた、スケールの大きい枯山水。北庭は、小さい面積の中にコケを敷き詰め、大小の岩とサツキの刈り込みで、滝の落ちる様子を表現しています。水分をたっぷり含んだコケは、ふわふわしたベルベット。空間をうまく利用して静と動を見事に造り出した庭園です。
 一休禅師は、大徳寺住職になってからも、ここから通ったそうです。私もここで一休み。
 境内には、「このはしわたるな」と書かれた小橋や、小坊主の一休さん像があり、遊び心のある工夫も見られました。「観光は、晴れに限る」と思っていた私ですが、しっとり静かな雨上がりもいいものです。

 帰りに、蟹の恩返しで知られる蟹満寺で、1300年前の釈迦如来像(国宝)を拝観し、木津川を見下ろす山中にある海住山寺で、鎌倉時代の傑作、五重塔(国宝)を見学しました。
 こうして、雨上がりの午後が過ぎていきました。
写真上から)酬恩庵・方丈の北庭とみとー/蟹満寺の本堂/海住山寺の五重塔