Vol.36 仁和寺、大トリの御室桜
「さくらの名所100選」                 04.4.15訪問/4.19掲載
 桜シリーズの最後を飾るのは、京都の仁和寺(にんなじ)です。去年12月に来た時は参拝者もまばらで、静寂という言葉がぴったりのお寺でした。ただ、葉っぱもつけずに寒そうにしている多くの桜の木々を見て、絶対に春に来ようと心に決めていました。

 しかし、今日はがらりと趣が違います。桜園の周りは、人、人、人。前回は無料だったのに、300円必要です。

 さて、仁和寺の桜は、御室桜
(おむろざくら)と呼ばれています。仁和4年(888年)に、寺を完成させた宇多天皇が出家して移り住んで以来、明治維新まで皇族が継承してきました。このため、仁和寺は別名「御室御所」として親しまれ、桜も御室桜と呼ばれるようになったのです
 周りの桜が散った後に、最後を飾るように咲く御室桜は、まさに王者の風格です。花びらが大きく、一斉に咲くとゴージャスの一言。低木で白い花なので、地面からモクモクと湧き上がる雲のよう。その向こうには五重塔がそびえています。顔を近づけてみると、何だか高貴な匂いがしました。

 桜園の喧騒を逃れ、寝殿と庭園に入りました。ぐっと人が減り、静かな雰囲気です。庭園は、白砂に池、緑、そして五重塔と特別な特徴はありませんが、眺めていると不思議と心が落ち着きます。

 仁和寺から路面電車に乗って、広隆寺へ。ここには、国宝第1号の弥勒菩薩半跏思惟
(はんかしゆい)像があります。体の線はシャープで滑らか。余分なものをすべて削ぎ落とした、非の打ち所のない美しさです。唇の両端を少しあげて、優しい微笑みが浮かべていました。
写真(上から)仁和寺の御室桜とみとー/仁和寺の庭園/広隆寺と路面電車