Vol.22 春呼ぶ炎、お水取り
04.3.3訪問/3.9掲載
 宵闇に、オレンジ色の火の粉が次々と降りそそぎます。

 今年も3月1日から、東大寺二月堂のお水取り(修二会)が始まりました。これは、本尊の十一面観音の前で、僧侶たちが人々の罪を清めるために行われます。なんと、今年で1253回目。奈良時代から一度も中断することなく続けられている、ありがたい行事なのです。
 真冬に逆戻りしたような冷たい寒さの中、二月堂の舞台の下には、観客が大勢集まっています。
 午後7時。境内の照明が消されると、一瞬、シ〜ンと静まりかえり、厳粛な雰囲気に包まれました。しばらくすると、オレンジ色に燃える炎がお堂の舞台に現れ、周りをぽっと照らしだしました。これから、何が起こるのだろうと、興味津々です。お堂の端で留まっていた炎が、突如、火の粉を撒き散らしながら猛スピードで移動していきます。
 お堂の下では、「キャー!熱〜い!」という黄色い声が飛びかい、一気に雑然とした雰囲気にかわりました。火の粉をあびると、厄除けになるということで、多くの人が炎を呼び込もうと手をのばしています。松明は、もう一方の端で、すべての火の粉を振り落とし、消えていきました。

 現代では、救いを求める行事というよりも、すっかり季節の風物詩になっている印象ですが、行事が終わった後、お堂に上がると、読経が聞こえてきて、今でも続いている信仰の深さを感じました。
 
 「お水取りが終わると、奈良に春が来る」と言われています。奈良市街の夜景を眺めながら、奈良の春はどんなものなのだろう?と期待をふくらませました。お水取りは、14日まで毎晩続きます。
写真(上から)お水取り(多重露光)/二月堂とみとー/二月堂から望む大仏殿と奈良市街