Vol.99 十津川、秘境の遊園地
05.5.28訪問/6.13掲載
 十津川村は、日本一大きな村(東京23区も上回る)。奈良市から車で3時間の秘境で、96%は山林です。集落は、村の生命線、十津川沿いの斜面に点在しています。

 まず、村の北にある谷瀬の吊り橋を訪れました。長さ約297m、高さ54m。日本一長い鉄線の吊り橋です。
 恐る恐る渡り始めました。足元の板はとても古く、所々欠けて隙間があったり、釘が錆びていたりと、ドキドキです。真ん中に行くに従って風が強く吹きつけ、橋がユッサユッサと左右に揺れます。はるか下は谷。人とすれ違うたびにバランスを崩しそうになり、ロープにしがみつきました。しかし、この橋、観光用ではなく村道なのです。橋の向こうに住む人々の大切な道で、自転車やバイクで通る人もいるそうです(まるでサーカス!)。川沿いを進むと、ほかにも多くの吊り橋があり、中には一軒家だけが使う橋もかかっていました。

 村の東にある笹の
滝は、「日本の滝百選」に選ばれている名瀑です。薄暗い原生林の中を抜け、急に開けた所に現れました。落差30m。名前のごとく、笹の葉のように一気に流れ落ちていました。
 そして、もう一つ。村の南には十津川ならではのものがあります。野猿(やえん)です。
 川を渡る手段で、定員1人の小さな屋形に乗り、自分でロープを引っ張って移動します。吊り橋のない所で、主に山仕事で使われていました。道路が整備された今は観光用として残っています。高さの恐怖がない代わりに、体力がいります。特に、ロープがしなる中央は、一番重さがかかりました。

 すっかり楽しんだ後は、もちろん温泉。十津川温泉郷はどこもかけ流しで、24時間いつもお湯が流れています。私は、滝の見える露天風呂で、水の音と虫の声を聞きながら、一日の疲れを癒しました。3時間の帰路、体はいつまでもポッポッとしていました。
写真(上から)谷瀬の吊り橋とみとー/森の奥にある笹の滝/人力で川を渡る「野猿」