Vol.93 美山 かやぶきの美景
05.4.30訪問/5.18掲載
 ゲロゲロッ、ゲロゲロッ。水をはった田んぼでカエルの合唱。その向こうにかやぶき屋根の家々。大都会・京都の隣にこんなに素朴な所が残っていたなんて!

 美山町の北村は、京都市内から車で北へ約1時間半。小さな谷間の集落です。50戸のうち38棟がかやぶき屋根の家で、国の重要伝統的建造物群保存地区です。
 村の入り口には、昔懐かしい筒型ポスト、隣にはお地蔵さん。まるで映画のセットのよう! あまりにも私の日常とかけ離れた風景ですが、ここはスクリーンの世界じゃありません。実際の人々の暮らしがあるのです。
 畑に咲いたチューリップや菜の花を眺めつつ、民俗資料館に行きました。ここは旧民家で、土間と囲炉裏のある座敷がありました。雪をかぶった集落の写真が飾ってあります。「今年は、雪が多くてねぇ」と、おばさんが話してくれました。急な階段を上って、屋根裏部屋へ。かやぶきの裏側が見え、木や竹を骨組みに、茅を縄でしっかりと結び付けている様子が分かります。昔は茅を収納する倉庫だったそうですが、今は、農耕道具や屋根の材料が展示されていました。
 次に訪れたのは高台の知井八幡神社。小さいながらも歴史を感じる立派な建物でした。きっと村の守り神だったのでしょう。

 最後に、集落全体を見ようと、山に登りました。所々、倒れた木々が道を塞ぎ、カエルをパクッとくわえた蛇にも遭いました。途中で引き返そうかと思ったくらいです。でも、登って正解でした。眼下には、背後の山に守られるように、かやぶきの三角屋根が同じ向きに並んでいました。
 すると急に、自然とともに生きる生活がとてもうらやましく思えてきました。美山のこの風景がいつまでも残ることを、願わずにはいられませんでした。
写真(上から)みとーと眼下の美山かやぶき集落/かやぶき集落入り口/屋根の裏側