Vol.91 怒りの大和古墳群
05.4.1訪問/5.5掲載
 奈良は、古墳の多いところです。私も毎朝、古墳の前を通って通勤しています。
 
県内で、古墳が最も密集するのは、桜井市から天理市にかけての大和(おおやまと)古墳群。天皇家の巨大な古墳から、小高い丘の古墳まで、とにかく古墳だらけという全国でも珍しい所なのです。
 
桜井市立埋蔵文化センターで、地図を手に入れました。あまりの古墳の多さに迷ってしまいます。歩き出すと、考古学者になった気分でワクワクしました。
 最初に訪れたのは、箸墓(はしはか)古墳です。木々が自由に生い茂る大和最古の古墳で、卑弥呼の墓とする説もあります。邪馬台国九州説では、
佐賀県の吉野ヶ里遺跡が候補地ですが、去年訪れた時はテーマパークのようにきれいに整備されていました。柵と看板があるだけの箸墓とは大違い。でも、自然のままに放置された姿にこそ、「想像力」というアンテナが働きだすのです。
 そして、邪馬台国畿内説を有力視する発見が、1998年、近くの黒塚古墳(史跡、天理市)でありました。卑弥呼が魏王から賜ったとされる三角縁神獣鏡が33面出土したのです。近くの資料館では、発見当時の様子が復元されています。邪馬台国は、どこにあったのか……。考古学って面白いですね。

 古墳群を見渡すと、大きな古墳に隠れがちな小さな古墳にも気がつきます。なだらかな丘が果樹園になっている所もありました。でも、これらはすべて古墳。すっかり日常に溶け込んだ風景なのです。
 しかし、古墳群の北端で見たものは、道路の建設現場でした。ノムギ、ヒエ塚古墳の間を通り、マバカ古墳をかすめる道路。平らにならされ、国道に続いています。付近の渋滞緩和のためらしいのですが、「数分早く」という便利さのためだけに、こんな貴重な古代の足跡を壊していいのでしょうか? 「日本の記憶」の宝庫でありながら、それを大切にしない行政の姿勢に怒りがこみ上げてきました。
写真(上から)黒塚古墳の墳丘に立つみとー/箸墓古墳とそばを走るJR桜井線
/ノムギ、ヒエ塚古墳の間で進む道路の工事現場