Vol.90 彦根城 桜花の生涯
05.4.15訪問/5.1掲載
 古都の桜は、4月2日に開花宣言が出されました。昨年より9日遅く、ほぼ平年並みです。
 そんな中、満開を迎えた桜がありました。彦根藩主、井伊家35万石の彦根城です。犬山城・姫路城・松本城とともに築城当時のまま現存する国宝の城の一つで、世界遺産の暫定リストに載っています。

 駅前には、鎧兜をつけた勇ましい像。井伊直弼かと思ったら、初代藩主、直政の像でした。
 歩いて15分。大きなお堀が見えました。石垣の上は、隙間なく満開の桜で埋め尽くされています。さらに進むと、またお堀。彦根城は、内と外に二重に環濠があるのが特徴なのです。
 直弼像は城の中にありました。幕末の桜田門外の変で暗殺された江戸幕府の重鎮は、「安政の大獄」など日本史上ではアンチヒーローですが、郷土では英雄なのです。舟橋誠一の小説「花の生涯」でもその生き様が描かれました。

 表門が入り口。すぐに、急な坂道です。そして見上げるような石垣が現れました。上には、もちろん桜。太陽の光をあびて、きらきら輝いています。二つの櫓をくぐると、見えてきました、天守閣です! 3層3階で、さほど大きくありませんが、幾つもの美しく反れた三角屋根がバランスよく調和し、まさに35万石の風格です。白壁にピンクの桜がよく映えます。
 天守閣に上がると、突風が顔を吹き付けました。金網ごしに外を見ると、遠くまで一望です。市内にはいまだ城より高い建物はなく、彦根城がシンボルであり続けているのが分かります。西には琵琶湖が広がっていました。あまりに大きく、まるで海のようです。
 下に降り、出口で靴を履こうとうつむいたとき、花びらが頭から落ちました。満開の桜がもう花吹雪になっていたのです。46歳で生涯を閉じた直弼以上に、桜は短命でした。
写真(上から)彦根城天守閣とみとー/城の内堀/玄宮園から見える天守閣