Vol.89 壬生の総て
05.4.24訪問/4.29掲載
 壬生(みぶ)といえば、新撰組の生誕地。繁華街に近いのに、路地に入ると、木造の古い佇まいが残り、当時の面影がしのばれます。

 訪れたのは、壬生寺。境内に壬生塚があり、新撰組の近藤勇像などがあります。でも、目的は新撰組ではなく、寺に約700年伝わってきた「壬生狂言」(重要無形民俗文化財)です。公演は年14日。春は4月21〜29日の9日間です。起源は鎌倉時代、円覚上人が大衆に分かりやすく仏の教えを説こうと考案したもので、セリフはなく、鐘・太鼓・笛に合わせて身振り手振りで表現します。まるでパントマイムです。
 1日の演目は5つ。毎日、最初は「炮烙(ほうらく)割り」です。炮烙とは、素焼きのお皿で、節分の参拝者が、家族の名前や年齢などを書き、寺に奉納する風習がありです。この炮烙は、話の最後に、舞台の手摺りいっぱいに高々と並べられ、一気に割られます。軽く500枚はあったでしょうか。舞台の下でガチャガチャ〜ン!という音が鳴り、土煙が一斉に上がりました。拍手喝さいです! 物語の分かりやすさ、登場人物ごとに違うお面の精巧さ、動きのユニークさ、衣装の美しさなど、独特の狂言を堪能しました。

 帰りに、新撰組の最初の屯所となった八木邸を訪れました。ボランティアガイドが、新撰組の秘話や、柱に刻まれた刀傷を解説してくれました。近藤勇、土方歳三、そして芹沢鴨。ここで過ごした人物たちの姿が思い浮かぶようでした。でも、私の新撰組に対する見方はちょっと冷ややかです。時代の流れを知りながら、古いものにしがみつこうとする姿勢には、共感できません。彼らのエネルギーを未来に活かせば、本当の意味での英雄になれた気がします。
 これが、私が壬生で知ったすべてのことでした!
写真(上から)壬生の八木邸とみとー/壬生塚の近藤勇像/壬生狂言