Vol.80 厳島神社からの伝言
 「厳島神社国宝展」05.2.12訪問/2.17掲載
 瀬戸内海の穏やかな青い海に、威風堂々と立つ朱の鳥居。安芸の宮島への入り口です。
 襟を正して進んでいくと、世界でも珍しい海上に立つ社殿があります。ここが、厳島神社です。
 対岸の愛媛出身の私は、ここを3回訪れました。目の覚めるような朱色の社殿は何度見ても鮮烈です。瀬戸内の自然と調和し、優雅さと気品に満ちています。平家一門の繁栄の歴史が加わり、一層、華やかです。

 しかし、昨年9月、台風で大打撃を受けました。神社の正面にある平舞台の床板が剥がれ、舞台横の左楽房が倒壊したのです。復旧には7億9000万円かかるそうです。その支援のため、奈良国立博物館で緊急に開かれたのが「厳島神社国宝展」(1月2日〜2月13日)でした。
 平安時代の鎧兜や刀、扇など国宝が数多くありました。鎧兜は、丁寧に織り上げられた糸の縫い目や描かれた模様まで完全な状態で、厳島神社がいかに日本の歴史の中で大切にされてきたかを物語っています。

 最大の見所は、平清盛が納めた写経(国宝)です。清盛の筆は、細い線ながらも、とめ・はね・はらいに勢いがあり、字の大きさも測ったようにそろったお手本のよう。筆跡から、厳しく実直な性格と、平家一門を率いる力強さが見てとれました。

 厳島神社は度々、台風の被害を受けてきました。近年の気象状況の変化は、地球温暖化が一因といわれています。世界遺産の厳島神社。この人類の財産を守るためには、地球上に暮らす私たち一人一人の環境意識の高まりこそが重要なのだと思いました。
 厳島神社
は、その美しさばかりでなく、地球環境についても、私たちに語りかけているのです。
写真(上から)厳島神社の祓殿/奈良国立博物館の前に立つみとー/厳島神社の回廊