Vol.78 2005年は薬師寺から
04.12.31-05.1.1訪問/1.6掲載
 「ゴォォォォォォ〜ン!」
 2005年は、薬師寺の除夜の鐘で幕開けです。

 大晦日の朝は雪。すごい勢いで降り、一面の銀世界かと思ったら、午後には雪も溶け、普通のイブとなりました。
 それでも、夜11時は凍えるような寒さです。境内はまだ人はまばらで静か。シンボルの2つの三重塔と金堂はライトアップされていましたが、通常は境内で間近には見られません。各屋根に裳階
(もこし)という飾り屋根がつき、強弱のリズムを刻む芸術的な塔が、夜空をバックに鮮明に照らし出されていました。
 そして、正面の金堂は、その名の通り、扉からは黄金の光が漏れていました。薬師三尊像(国宝)です。薬師如来の両側で日光・月光菩薩が少し腰をひねらせた様子は、ミロのビーナスを思わせます。奈良時代以前の白鳳文化の傑作ですが、ピカピカに磨き上げられ、全く古さを感じません。それどころか、この美しさは永遠ではないかと錯覚したくらいです。まぶしい光に満ちた空間にすっかり魅了され、これが仏の世界なのだと直感しました。

 実をいうと、私は薬師寺があまり好きではありませんでした。東塔を除くすべてが兵火で焼失し、多くの建物が真新しいからです。しかし、今日、私が見た薬師寺は、建物の新旧に関係なく、時空を超えた仏の世界でした。

 11時30分。鐘楼の前では、お坊さんたちと一緒に全員が般若心経を唱え、除夜の鐘が始まりました。5人一組で、訪れた人は全員がつけます。
 私も、今年も奈良で新年を迎えられることに感謝しながら鐘をつきました。
写真(上から)金堂の薬師如来とみとー/ライトアップされた西塔(左)と東塔