Vol.70 比叡山、足跡踏みしめて
 04.11.20訪問/11.25掲載
 「比叡山の紅葉が盛り」という情報を得て、慌てて出かけました。電車、ケーブルカー、ロープウェイと乗り継ぎ、比叡山頂駅に着いたのは、家を出て2時間後。辺りは、ひんやりとした空気に満たされています。ここからの眺めは素晴らしく、まるで天上界です!

 1200年前、日本仏教の礎を築いた最澄は、ここに天台宗・延暦寺を建てました。寺は、3つのエリアに分かれています。中枢の根本中堂(国宝)がある東塔、杉木立の中の西塔、そして紅葉が美しい横川
(よかわ)です。これらをつなぐシャトルバスがありますが、私は、最澄が歩いた古道を辿ることにしました。
 古道は、うっそうと茂った杉やモミの木の間を縫うように通っています。昼間なのに薄暗く、空気は一層ひんやり。でも、遠くで聞こえる鳥のさえずり、葉っぱのこすれる音に、自然の清々しさを感じます。30分で東塔、さらに20分で西塔に着きました。

 しかし、大変なのはこの先です。横川までは4km。ここからは尾根の道で、自動車専用道路と並行しています。
 途中、地面がモミジの落ち葉で満たされた場所がありました。近くにモミジの木はなく、ふと自動車道路の方を見ると、その道沿いにだけにモミジが植えられていました。雄大な山中の安っぽい「演出」です。自動車道路の途中の展望台からは琵琶湖が一望できますが、古道からは木々が邪魔をします。峠の玉体杉からわずかに琵琶湖を望める程度です。でも、その爽快感は、忘れられません。この道こそ、最澄の足跡なのです。
 1時間後、日暮れ近くになって、やっと横川に着きました。期待していた場所のモミジはすでに散っていましたが、その残念さはなく、むしろ、歩きとおした満足感でいっぱいでした。
写真(上から)比叡山延暦寺の西塔・根本中堂とみとー/東塔の落ち葉/横川のモミジ