Vol.69 鞍馬、義経の幻 04.11.22訪問/12.2掲載
 馬といえば、天狗。市街地から叡山電鉄で30分。山の中の終着駅を降りると、すぐ巨大な天狗の顔が出迎えてくれます。ちょうど1ヵ月前には、有名な「鞍馬の火祭」を見にきました。大松明に火をともし、集落を練り歩く勇壮なお祭りでしたが、あまりの人ごみで寺の入り口の仁王門に近づくことすらできませんでした。

 でも今日の旅は、紅葉に彩られたこの門をくぐって始まります。5分程上ると由岐神社の大きな鳥居が見えてきました。鞍馬寺の鎮守社で、火祭は、この神社の例祭なのです。次に、九十九折の道を上り、寺の本殿を目指します。太陽の光が透けてパステルカラーになった紅葉を楽しみながら歩くと、急な坂もあっという間。さすがに鞍馬寺は大きいお堂でした。中には「テロはやめよう、戦争もやめよう」の張り紙がありました。寺のポリシーを受け止め、そっと手を合わせました。


 ここから奥は、源義経の時代に思いを巡らせながら歩きます。鞍馬は、牛若丸(義経の幼名)が天狗から剣術を習った所。修行中にのどを潤した「息つぎの水」や、奥州に下る際に名残惜しんで背丈を比べた「背比べ石」、牛若丸と天狗が出会った僧正ヶ谷不動堂など、歴史の舞台を追体験。道の脇には、義経の御霊を祀った小さなお堂もありました。森の中を駆け巡り、育った義経。その後の悲運を思えば思うほど、ドラマチックな義経像が浮かんできます。05年のNHK大河ドラマ「義経」が楽しみになりました。
 地面に血管のように縦横無尽に根が伸びた名物「木の根の道」を通り、さらに下ると、ザーッという水の流れが聞こえてきました。ここはゴールの貴船。長い道を歩いた疲れも、川に流されていきました。
写真上から)鞍馬の火祭/「木の根の道」のみとー/鞍馬寺の仁王門