Vol.68 修学院離宮、借景の美
 04.11.12訪問/11.20掲載
 京都の山並みをぜいたくに取り込んだ究極の借景――修学院離宮。紅葉が赤く色づき始めた頃、訪れました。

 修学院離宮は、京都市内の北東、比叡山の麓にあります。辺りは閑静な住宅街で、ほかの社寺と比べると、落ちついた雰囲気です。ここは、江戸時代初期に後水尾天皇が美しい自然に魅せられて造営した山荘なのです。現在は宮内庁の管轄で、総面積は東京ドームの10倍以上の50万u。山の斜面や麓の棚田まで敷地の一部なのです。
 全体は、下・中・上と3つの離宮からなっています。中でも一番の見所は上離宮。高台の茶屋からは、眼下の回遊式庭園が一望です。植え込みや松の木がきちんと切りそろえられた中に、色づき始めた紅葉が絶妙なバランスで彩を添えます。その向こうには、鞍馬山から愛宕山まで京都の山々が折り重なり、何とも贅沢な景色。天皇や貴族たちは、この景色を眺めながら、茶の湯や歌を楽しんだとか。そのスケールの大きさと、計算されつくした庭園美に、思わず息をのみました。

 ところで、見学の手続きは、少々面倒です。3〜1ヵ月前までに宮内庁にハガキで申し込むのです。4月からインターネット予約が始まり、空きがあれば1週間前でも申し込めるようになりました。しかし、紅葉の時期は競争率が高く、私は4度目の挑戦で「参加を許可」されました。

 昨年1月、庭園をテーマにしたシンポジウムで写真を見て以来、ずっと心にあった修学院離宮。本来なら、心を落ち着けて、庭の静けさを味わうべきだったのかもしれませんが、念願の景色を見られたことのうれしさで、終始はしゃいでしまいました。
写真上から)上離宮の庭園とみとー/下離宮の庭園/中離宮の茶屋