Vol.66 正倉院展、シルクロードの調べ
 04.11.4訪問/11.11掲載
 56回目の正倉院展が、今年も奈良公園の奈良国立博物館で開かれています。
 正倉とは、宝物を納めた倉庫のことです。奈良時代には各地の官庁や寺にあったのですが、現在残っているのは東大寺だけ。聖武天皇の妻、光明皇后が亡夫の遺品を大仏に奉納し、その品々などがここに保管されているのです。その一部が毎年公開されています。

 昨年の正倉院展に続き、2度目の観覧。前回は、宝物の色鮮やかさに目を奪われましたが、今年は耳でも楽しめます。テーマは「祭祀」。琵琶や鼓、竪琴などの楽器や、伎楽
(ぎがく)面が見所で、当時の華やかな祭祀の様子が目に浮かんできます。特に「楓蘇芳染螺鈿槽琵琶(かえですおうぞめらでんそうのびわ)」は、群を抜く美しさ。頭部が折れ曲がった形は、ペルシャが起源。胴体の表面には、白象に乗って楽器を奏でたり、踊ったりする4人の楽しそうな姿が中国風に描かれ、裏面全体には、虹色に光る貝殻をはめ込んだ螺鈿細工で、仏教の花が散りばめられています。これぞ、様々な文化を取り入れながら生み出されたシルクロードの傑作です。
 耳につけていた音声ガイドからは、琵琶の音色が聞こえてきました。ゆったりとして格調高い調べに酔いしれました。
去年は視覚、今年は聴覚でも。正倉院展の宝物は、実にバラエティに富んでいます。

 また、奈良国立博物館では、「仏教の名品」という常設展も開かれています。アフガニスタンや中国、また飛鳥時代から鎌倉時代にかけての仏像が時代別に並んでいます。ただ、国宝は、県内外の寺から寄託されたものばかり。所蔵品にはありませんでした。
写真上から)正倉院展会場とみとー/「楓蘇芳染螺鈿槽琵琶」が描かれた幡
/十一面観音像(博物館所蔵品のみ撮影可)