Vol.61 初秋、花のコンチェルト
奈良・花めぐりシリーズV            04.10.6,7,14訪問/10.21掲載
 ♪リリリリリン・・・ヒュルルルルン♪ 夕暮れになると、大和路に虫の声が響くようになりました。季節の変わり目を告げるように、奈良は花盛り。奈良市の3つのお寺を巡りました。

 まずは東大寺の北、「コスモス寺」として有名な般若寺です。歴史は古く、飛鳥時代に創建されました。一歩足を踏み入れると、私の背丈ほどもあるコスモスが辺り一面を埋め尽くし、境内は迷路のよう。脇に並ぶお地蔵さんの顔も、コスモスからちらりのぞくだけです。
 境内の中央にそびえるのが十三重塔。手前で軽やかに風に揺れるコスモスとは対照的に、秋空に力強くそびえ、奈良の秋を代表する一場面を演出していました。
 
 続いて訪れたのは、奈良町の元興寺。秋の七草の一つ、萩の花が満開でした。萩は、万葉集でも歌われた秋を代表する花で、その美しさは日本人の美的感覚を表しています。西洋花のような華やかさではなく、落ち着いた色合いの小さな花を無数に咲かせ、控えめに秋を彩ります。虫の声しか聞こえない静かな境内で、さりげなく秋の気配を告げる紅白の萩。私が好きな花の一つです。
 最後は、市西部にある霊山寺
(りょうせんじ)のバラ庭園です。奈良時代の創建、国宝の本堂と由緒あるお寺なのですが、バラ園は、噴水や裸婦の彫刻、紅茶を飲めるテラスがあり、まるでヨーロッパのお庭のようでした。ここは、極楽なのだとか。しかし、境内には、ゴルフ練習場や入浴施設もあり、新しい寺の形に、ちょっと戸惑ってしまいました。
 花の見頃が終われば、いよいよ紅葉です。こうして大和路の秋はどんどん深まっていきます。
写真上から)般若寺のコスモスとみとー/元興寺の萩/霊山寺のバラ庭園