Vol.58 ほんのり なら燈花会
04.8.15訪問/8.27掲載
 奈良に無数の灯りの花が咲きました。夏の風物詩・なら燈花会(とうかえ)です。
 8月5日から15日までの11日間、奈良公園の周辺を11のブロックにわけ、灯りの形や配置などをテーマ別に工夫し、蝋燭の灯りがあふれました。私も数年ぶりに浴衣を着て、わくわくしながら出かけました。

 まずは「船灯りのエリア」に行きました。ここは浮見堂。池の中に浮かぶように八角形のお堂が建っています。光が尾を引くように池に映り、ボートが行きかうたびに揺れるのを静かに見つめました。
 興福寺の五重塔を望む猿沢池は、「蛍のエリア」。ここは奈良を代表する風景です。池沿いには出店が並んでいました。しかし、真っ暗な空を背景にすると、賑やかな出店の灯りまでもが演出となり、静と動、今と昔といったコントラストを感じる風景でした。
 私が一番気に入ったのは、「満天のエリア」です。奈良公園内の広い芝生が闇に消え、無数の灯りがどこまでも続いています。瀬戸内海で育った私には、果てしない海と漁船や暮らしの灯りが連想され、懐かしい気持ちになりました。

 燈花会は今年で6回目。1300年の奈良の歴史と比べると、まだまだ新しいイベントです。京都の花灯路のような洗練された美はありません。でも、歴史の重みとほのかな灯りがうまく調和して、奈良の素朴さが印象に残りました。郷愁を誘われた奈良の夏の夜でした。
写真左:上から)「船灯りのエリア」/「蛍のエリア」/春日野の「憩いのエリア」と大仏殿
(右)「満天のエリア」のみとー