Vol.49 斑鳩の里、聖徳太子の遺産
 04.7.15訪問/7.19掲載
 例年より1週間早く梅雨が明けました。真っ青な空にもくもくと湧き出す入道雲。暑い暑い奈良の夏を覚悟しつつ、法隆寺のある斑鳩の里を歩いてきました。4月から6月まで奈良国立博物館で開かれていた「法隆寺展」で、優しい微笑を称える飛鳥仏に惹かれたからです。

 まずは、朱色の三重塔がシンボルの法輪寺。聖徳太子の息子が、父の病気平癒のために創建しました。暑いからでしょうか、客は私だけで、頭にキーンと響くほどに蝉が鳴いています。講堂には、飛鳥の仏像が並んでいました。近くで、太子の掘った井戸(なんと史跡!)も見つけました。
 法輪寺三重塔、法起寺三重塔法隆寺五重塔は斑鳩三名塔と言われています。三塔を眺めるポイントがあると聞き、実際に行ってみたのですが、今では鉄塔や民家に邪魔されていました。
 稲が膝丈まで伸びた田んぼのそばを通り、15分ほど歩くと、法隆寺の隣にある中宮寺に着きます。太子が、母のために建立した尼寺です。見所は、教科書にも載っている弥勒菩薩半跏思惟像(はんかしゆいぞう)全体に黒漆が塗られて光沢があるので、一見すると木造とは思えません。係の人に「他にお客さんもいないから」と仏像の側まで近寄らせてもらい、木目を確認しました。木目がむき出しの京都・広隆寺の弥勒菩薩の美しさとは違った優しさを感じました。

 法隆寺の西には藤ノ木古墳があります。豪華な副葬品から6世紀末の豪族の墓といわれていますが、詳しいことは分かっていません。太子の叔父の墓説もあり、気になるところです。
次回は「古都の風」50回記念。いよいよ法隆寺です。
写真上から)藤ノ木古墳の石棺のレプリカとみとー/法輪寺の三重塔/中宮寺の本堂