Vol.45 ○○配る 唐招提寺 04.5.19訪問/5.31掲載
 唐招提寺は、鑑真が8世紀に開きました。メーンの金堂(国宝)は09年完成を目指し改修中ですが、講堂・経蔵・宝蔵・鼓楼(すべて国宝)などが華やかな天平文化を伝えています。

唐招提寺は厳しい戒律で知られる律宗の寺ですが、毎年5月19日にはあるモノを撒くユニークな行事があります。そのきっかけとなった逸話は…。
 鎌倉時代の高僧、覚盛が修行していると、蚊がぷ〜んと飛んできて、覚盛に止まりました。うちわで追い払おうとした弟子を止めて一言。「蚊に自分の血を与えるのも菩薩行である」。さすがは、律宗のお坊さん。その徳を称え、覚盛の命日に「うちわ撒き」が始まったのです。
 うちわはなぜかハート型。その理由は分かりませんが、病魔退散や魔よけとして大人気で、毎年、激しい奪い合いが展開されるらしいのです。
 ところが、今年は朝からシトシト雨。人が減ってうちわをつかめるかも、と思い、出かけました。リュックの上から合羽を着て、準備万端です。

 やる気満々で唐招提寺に着いたのですが、金堂で足止めになりました。なんと、雨のため、うちわ撒きは中止。代わりに、参拝者全員に配るというのです。うれしいやら悲しいやら。でも、後で約50年ぶりの中止と聞き、「貴重な経験かも」と思いました。
 30分後。講堂であっさりゲット。来年への期待を込め、うちわが撒かれるはずだった鼓楼の前で記念撮影しました。

 唐招提寺から近鉄の線路に添って北へ歩くと、水を満々とたたえたお堀のあるきれいな古墳が現れます。ここは、垂仁天皇陵です。奈良にある古墳は93ヵ所で、全国一です。普段はあまり気に留めませんが、古墳のある景色もまた、奈良なのです。
写真上から)唐招提寺の鼓楼とうちわを手にするみとー/唐招提寺の経蔵/垂仁天皇陵