Vol.37 伏見稲荷、果てしない赤
 04.4.29訪問/5.5掲載
 青々とした芝生の上で、平安装束の歌人たちが、短冊に歌をしたためています。遣水(やりみず)と呼ばれる小川では、真っ赤な盃が流れてきます。その盃の酒を飲み干せば、歌が完成した合図です。

 京都・伏見の城南宮
で、曲水の宴がありました。優雅な光景に、紫式部の『源氏物語』の世界を思い描きました。それもそのはず、ここは、白河上皇が光源氏の大邸宅をモデル
につくったのです。神苑には、物語に登場する100余の植物があり、アヤメが見頃を迎えていました。
 キーワードが告げられました。「岩・松・久しき・緑」。歌人はこの言葉をすべていれて即興で歌を詠まなければなりません。今か今かと待ちながら、私もこんな歌をつくりました。
「日差し浴び 久しき緑 燃ゆる庭 岩のごとくに 歌詠みをまつ」
 とても風流で、平安時代にタイムスリップしたようでした。

 続いて、清少納言も詣でたと『枕草子』に書いている商売繁盛の神様、伏見稲荷大社を訪れました。何と言っても多くの鳥居が立ち並ぶ「千本鳥居」。朱塗りの鳥居がぎっしりと整列し、どこまでも続いています。ブラックホールならぬ、レッドホール。その鮮やかさに吸い込まれそう。本当に千本もあるのだろうか、と疑問に思い、一つずつ数えながらくぐることにしました。
 新旧、大小、石の鳥居……。あっと間に1000本。それでも、先は続きます。ここは全長4kmに渡る「お山めぐり」の行程だったのです。1314本であきらめ、山を下りましたが、次回はぜひ踏破したいと思います。もちろん数を数えながら……
写真(上から)伏見稲荷の千本鳥居とみとー/城南宮の「曲水の宴」/伏見稲荷の本殿