Vol.31 醍醐寺、桜の醍醐味
「さくらの名所100選」                   04.4.4訪問/4.9掲載
 京都には17ヵ所の社寺と城郭が世界遺産に登録されています。その中でも、最も桜が似合う寺、それが醍醐寺です。ここは、豊臣秀吉が「醍醐の花見」を行ったことで有名な花の寺です。桜の数は、約800本。総門をくぐると「桜の馬場」という花道が続いています。しかし、次々とやってくる観光客で、じっくり鑑賞する余裕もありません。

 お目当ては、秀吉が自ら設計した三宝院庭園です。中に入ると、広い池を中心とした縦に長い庭のパノラマが広がります。複雑な形の池、様々な石、じゅうたんのような芝の橋、流れる音が心地いい小さな滝……数々の見所に飽きることはありません。派手好きな秀吉の性格がよく表れていると思いました。不思議なことに、この景色の中に桜はありません。実は、ここは秋を鑑賞するために造られた庭なのです。しかし、秀吉は、秋の庭を見る前に亡くなりました。この事実は、秀吉が秋の物悲しさよりも桜の明るさが似合う人物だった、ということをさらに強調しているように感じられました。
 境内には、京都最古の五重塔(国宝)や金堂(国宝)をはじめ、山の上まで多くの建物が点在し、一大仏教施設になっています。それもそのはず、修験の場でもあるのです。この日も、ほら貝を吹き鳴らしながら、山伏の一行が桜の花道を通り抜けました。


 秀吉の次は、小野小町ゆかりの隨心院。この辺りは、小野氏の栄えた地域で、宮仕えを終えた小町が余生を過ごしたところです。門の前の大きなシダレザクラの下で、私も一句思いつきました。
  「桜舞うはかなき季節のこの瞬間 見逃すまいと取材の毎日」
写真(上から)醍醐寺の桜の馬場とみとー/山伏たち/随心院のシダレザクラ