Vol.30 桜空かける姫路城
「さくらの名所100選」                   04.4.2訪問/4.6掲載
 「古都の風」連載30回を記念して、今回は古都を離れ、8年ぶりに世界遺産の姫路城を訪れました。
 奈良から電車を乗り継いで約2時間。昨夜の雨はすっかり上がり、まぶしい日差しです。10分歩くと、大きなお堀が見えてきました。大手門をくぐると、満開の桜とその向こうに姫路城が姿を現しました。

 堂々として、気品のある城。吸い寄せられるように近づきました。だんだんと輪郭がはっきりして、壁の白さが一層まぶしくなります。前回より輝いて見えたのは、きっと化粧直しをしたからなのでしょう。
 強い風に花びらが舞い散る中、天守閣を見上げると、ものすごいスピードで雲が通り過ぎていきます。まるでVTRの早送り。眺めていると、お城の方が動いているよう。別名「白鷺城」。風に乗って青空を舞う白鷺のイメージが、私の中で重なりました。
 外観とは裏腹に、一歩城内に足を踏み入れると、緻密に計算された要塞だったことが分かります。天守閣へ行くには、迷路のような道をたどり、多くの門をくぐらなければなりません。壁や塀は至るところに鉄砲穴があけられ、いつでも臨戦態勢です。天守閣内には、槍や刀をかけるところが何ヵ所もあります。ここは、最後の砦だったのです。天守閣からは、桜に彩られた庭はもちろん、遠くの山々まで見渡せました。

 シャンボール城(フランス)、エジンバラ城(イギリス)、紫禁城(中国)……、いくつもの城を見てきました。その中でも、これほど美しく、力強く感じた城はほかにありません。さらに、桜という極上の彩が加わり、忘れられないシーンとなりました。日本人の価値観と美意識が結集された姫路城。同じ日本人として誇りに思いました。
写真(上から)姫路城天守閣とみとー/姫路城のろの門/天守閣から西の丸を望む