Vol.26 藤原京跡 ゲンセツ・デビュー
04.3.20訪問/3.30掲載
 古都・奈良は、遺跡の宝庫でもあります。月に何度か遺跡の現地説明会(略して「ゲンセツ」)が開かれ、多くの考古学ファンが訪れます。今月は、明日香村で蘇我馬子の邸宅跡が見つかったと大きく報じられ、人口6800人の村に1万3000人がやってきました。「ゲンセツ」の魅力を探りに、私も出かけてきました。

 訪れたのは、藤原宮跡(特別史跡)。平城京の前の都で、平城宮跡と同様、三方を山に囲まれた平地にあり、現在はだだっ広い空間として残されています。しかし、ここが都だったのはわずか16年間。立派な朱雀門などが復元された平城宮跡と比べると、知名度は低く、何もない所です。
 朝から雨がしとしと降り、地面はどろどろにぬかるんでいました。なのに、見物客は次々と来ます。考古学ファンは圧倒的に年配の男性。ゲンセツでは、綺麗なパンフレットが配られ、調査員が丁寧に説明してくれます。
 初めて見る発掘現場は、とても美しいものでした。柱や溝の跡と思われる遺構が、規則正しくハッキリと示されています。瓦が堆積した部分があったり、丸い柱の後に石が残っていたりと、素材まで当時のまま。1300年以上も前のものが、こんなに綺麗な形であるなんて驚きです。文献と照らし合わせると、大臣がいすに座っていた!なんてことも分かるのです。考古学おそるべし。

 帰りに、近くの橿原考古学研究所付属博物館に立ち寄り、主に古墳時代から奈良時代までの出土品などを見つつ、ここに暮らす人々の生活を考えました。遺構や出土品を手がかりに、はるか昔の生活を、模型のように組み立てていく、考古学にはそんな楽しみにがあるのかもしれない、と思いました。
写真(上から)藤原宮跡とみとー/藤原宮跡の発掘現場/発掘現場の出土品