Vol.19 春遠からじ、元興寺 04.2.13訪問/2.19掲載
 まるで春が来たような暖かい陽気に誘われ、元興寺(がんごうじ)と奈良町を散策しました。
 近鉄奈良駅から2つの商店街を抜けると、白壁と格子戸が特徴の奈良町が現れます。幕末から明治にかけての町屋の面影を残す街並みで、元々は元興寺の境内でした。駅周辺の雑音は全く聞こえず、とても静か。酒屋さんも豆腐屋さんもみんな町屋に店を構え、とても情緒があります。

 ふと家々の軒先を見ると、お手玉のようなものが、お団子状にぶら下がっているのに気づきます。「これはなんの印だろう?」。その答えを、庚申堂
(こうしんどう)で見つけました。扉の前にはサルの石像、屋根の上には「見ざる聞かざる言わざる」がいるユニークなお堂です。軒下にたくさんぶら下がっているこの飾りは、魔よけのお守りで、庚申さんの使いである猿を型どっているのです。シックな町屋の外観に、赤と白のお守りがよく映えます。
 町屋を無料で見学できる場所があるので入ってみました。まず、吹き抜けの土間が出迎えてくれます。次に昔懐かしい階段下の黒たんすが目に留まりました。そして奥には中庭、さらに蔵があり、概観の印象よりもずっと広いことが分かります。この時代は、通りに面した部分の広さによって税金がかかるため、奥に長い家の造りになっているのです。格子の隙間から春の光がはいってきて、しっとりした気分になりました。

 最後は、今日のメインの元興寺です。蘇我馬子によって飛鳥に建立された飛鳥寺が、平城京遷都の時にここに移されたものです。シンメトリーの屋根が、青空をバックに引き立っています。境内には、梅が咲き、春がすぐそこまで来ていることを知らせていました。
写真(上から)元興寺とみとー/奈良町の庚申堂/奈良町の町屋