つい1週間前まで秋の風情が漂っていた奈良も、木々は葉を落とし、 寒そうにしています。すっかり冬の装いです。冷たい風を切って自転車を走らせ、西大寺に向かいました。
西大寺は、東の東大寺に対して、西の大寺として765年に建てられました。本堂・四王堂などが立ち、南都七大寺の一つだった往時がしのばれます。しかし、何度か火災に遭い、創建時のものは、五重塔の基壇と、四王堂の四天王像に踏まれる邪鬼だけです。
お寺には、 大茶盛り(おおちゃもり)という有名な行事があります。人の顔がすっぽり入ってしまうほどの大きな茶碗でお茶を飲む儀式で、750年以上の歴史があります。鎌倉時代にお寺を復興し、真言律宗を開いた叡尊が、神前に当時薬として大変貴重だったお茶を献じ、参拝者にも振舞ったことがきっかけで始まりました。私も特別に茶碗を持たせてもらいました。とても重たくて、持ち上げるのがやっとでした。
西大寺から住宅地を抜け、自転車で10分足らず、雑木林の中に秋篠寺があります。ここも奈良時代の創建ですが、火災で多くの建造物が失われました。唯一焼け残った講堂を鎌倉時代に改築したのが、本堂(国宝)です。この中に芸能の神様で日本唯一の伎芸天があります。頭を少し左に傾け、腰をくねらせ、左の足を少し前に出して、やさしい笑顔で微笑んでいます。「肩の力を抜いて、楽しくいこうよ!」と言われているようでした。人が少なく、お堂の中で聞こえてくるのは、外でさえずる鳥の声だけです。誰にも邪魔されず、心ゆくまで仏像を鑑賞できます。
これぞ古刹! 秋篠寺は小さなお寺ですが、気持ちが落ち着く私のお気に入りです。 |