Vol.8 曼陀羅あでやか当麻寺
 03.11.28訪問/12.1掲載
 国宝「当麻(たいま)曼陀羅」が1240年ぶりに復元されたという話を聞き、一目見ようと、当麻町(現・葛城市)の当麻寺(たいまでら)を訪れました。当麻寺は、赤や黄色に彩られた二上(にじょう)山を背に、威厳をたたえて立っていました。

 室町時代に模写した曼陀羅を奉っている本堂、2つの三重塔などは国宝です。
 奥には奥院があり、ここに期間限定で「当麻曼陀羅」が公開されていました。縦横の長さが2.3mで、原本の約3分の1の面積で、京都・西陣で染めた絹糸で再現されています。
 中央には、阿弥陀如来が描かれ、周囲にはその話を熱心に聴いている多くの菩薩たち、下の方には蓮池があり、音楽が奏でられています。また、阿弥陀如来の背景には、平等院鳳凰堂によく似た優雅な神殿がたち並び、空には雲に乗った菩薩たちが漂っています。
 これぞ、まさに極楽浄土。これほど、美しく、豪華で、鮮やかな世界は、たとえ夢でも創造できないでしょう。キリスト教で言う天国や、現代のディズニーランドも到底及ばないほど美しい世界です。さらに驚くことに、この曼陀羅はつづれ織りの技法なので、裏面にもまったく同じ世界が描かれているのです!

 伝説では、763年に、藤原豊成の娘・中将姫が、一晩で織ったと伝えられています。復元するだけでも4〜5年かかったそうなので、当時の人たちの想像力と美的センス、技術は「神業」ならぬ「仏業」です。

 奈良市から離れているせいか、人がまばらにしかいません。そのことが、このお寺をより神聖なものにし、私の心に強く残りました。この後、近くの石光寺
(せっこうじ)に立ち寄り、早咲きのボタンを見て帰りました。
写真(上から)当麻寺本堂とみとー/当麻寺奥の院/石光寺のボタン