Vol.5 シャクナゲしっとり、室生寺
 03.11.15掲載/05.4.29再訪/5.18リライト掲載
 ゴールデンウィーク初日は真夏を思わせる強い日差し。新緑がまぶしいほど目にしみます。室生村の室生寺は、山の奥深くにありました。

 朱色の太鼓橋を渡ると門があります。普段は静かなお寺なのですが、今日は次々と参拝客が来ます。お目当ては、約3千株のシャクナゲ。午後の日差しにしぼんでいるのでは?と心配しましたが、杉木立で日陰が保たれ、花々はみずみずしく咲き誇っていました。
 金堂(国宝)へ向かう長〜い石段「鎧坂」の両側にもぎっしりと咲いています。シャクナゲは、咲くと濃いピンクの花で、だんだん白くなってきます。まだ蕾もあり、ピンクと白の花が混じって、一番きれいな時でした。
 五重塔(国宝)の前にきました。大勢のカメラマンが構えています。この五重塔は、高さ16m。屋外で立つものとしては日本最小です。屋根の勾配は緩やかで、均整のとれた美しい塔。屋根にある白いラインの縁取りが朱色の塔を引き締めます。ちょうど、西日が差し込み、五重塔が一層鮮やかに浮かび上がりました。手前のシャクナゲとの光と色のコントラストにうっとり! ホトトギスのうれしいさえずりも聞こえてきました。
 そして、ここに来たなら、ぜひ見たいものがありました。金堂に安置された5体の仏像と十二神将像(すべて撮影NG)です。特に十一面観音像(国宝)は、ふっくらとしたお姿にふわりと軽やかな衣を着て、女性らしい優しさが印象的。食い入るように見ていると、係のおばさんが「作者が妻をモデルに作ったといわれ、妊娠していたので、ふくよかなんです」と説明してくれました。愛に満ちた仏像。心が温かくなりました。

 室生寺は、女人禁制の高野山に対して、女性の参拝を認めた「女人高野」でした。 朱色の橋、五重塔、仏像、シャクナゲと、すべてが小ぶりで可憐。今も、心落ち着く女性の寺でした。
写真(上から)シャクナゲが咲き誇る室生寺の五重塔とみとー/室生寺の鎧坂/室生寺の金堂