Vol.3 正倉院展、時空越える国際色
 03.11.6掲載
 木々が赤や黄色に色づき、黄色い落ち葉の絨毯の上では鹿たちがのんびり草を食む.。奈良公園では、まるで絵画のような芸術的な瞬間を迎えています。
 そんな中、55回目の正倉院展が奈良国立博物館で2週間開かれました。正倉院は、聖武天皇の遺品やシルクロードを渡ってきた逸品などの宝物を所蔵しています。1300年前の宝物って一体どんな物か、ワクワクしながら自転車をこぎ、博物館に向かいました。

 まず目をひくのは「平螺鈿背円鏡
(へいらでんはいのえんきょう)」です。直径27.2cmの円形の鏡背いっぱいに、光沢のある貝殻と透き通るような赤・青・緑の宝石が散りばめられ、まばゆく輝いています。花びらを表す赤い宝石はミャンマー産の琥珀。白・淡青・緑に発色するトルコ石はイラン産、藍色のラピスラズリはアフガニスタン産で、中国からの舶載品です。これらはシルクロードをつたって奈良にやってきた証なのです。

 今年の展示の特徴は、細かい刺繍を施した染織品や、色鮮やかな顔料に関するものが多いことです。つま先が刺繍で花形に盛り上がっている貴族のスリッパ。高松塚古墳の壁画にも描かれてるような赤・紫・緑の布を交互に継ぎ合わせたスカートなど、どれもカラフルでとってもおしゃれ。現代の私が見ていても、参考にしてみたい色遣いがたくさんありました。
 1300年前の色がそのままで残っているという、その顔料の質の良さと染色技術の高さにも驚かされました。奈良時代の人は、外国からやってくる様々な色を積極的に採り入れ、常に「最先端」を追い求めていました。展示を通して、私が思い描いていた奈良時代のイメージがカラフルに、生き生きとしたものになりました。
 帰りに見る真っ赤に色づいた紅葉が、奈良時代の色を想像させてくれました。
写真(上から)みとーと正倉院/「平螺鈿背円鏡」が描かれた看板/奈良国立博物館